遺言





遺言とは?
遺言とは,故人が元気な内に,自分の財産の分け方や相続させる相手について,自分の意思を書類に残したものです。
遺言の内容は遺産に関する意思表示が一般的かとは思いますが,遺言による認知など,身分関係に関する意思表示も,することができます。

効果は?
もしも遺言が残されていなければ,民法の規定に従って,財産を分けることになります(「法定相続」といいます)。
例えば,夫A・妻B・子供C・子供Dというご家族の場合に,Aさんが亡くなった場合の,法定相続について考えてみます。
配偶者と子供が相続人の場合,配偶者が2分の1,子供が2分の1となります(民法900条1号)。また,子供の相続分は等しくするように定められています(同4号本文)。
したがって,Aさんの遺産の相続については,配偶者Bさんが2分の1,子供Cさん・Dさんで残りの2分の1を等分するので,子供Cが4分の1,子供Dが4分の1となります。
しかし,法定相続に従うと,相続人間で事実上不平等が生じる場合や,紛争に発展しかねない事態になる場合があります。
そのような法定相続による不都合を回避するために,遺言を活用して,自分が妥当と考える遺産の分け方について,意思表示ができます。
例えば上の事例で,これまで夫Aさんの財産で生活していたBさんにとっては,遺産の分け方が生活を左右する一方で,Cさんは医者,Dさんは実業家としてそれぞれ大成功を収めているとします。この場合,遺産分割協議がうまく整えばいいですが,法定相続通りに分けることになれば,事実上BさんとCさん・Dさんの間で,生活における著しい不平等が生じ得ます。Aさんの「Bさんの生活を守ってあげたい」という意思を遺言で明確に示しておくことで,Aさんの死後であっても,AさんはBさんの生活を保つことも可能です。
また,Cさんは仕事も休みながら熱心にAさんの介護をしていた一方で,Dさんは連絡の一本もして来ないという場合,Cさんの心境としては,Dさんと同じ相続分では納得ができない,という気持ちになってもおかしくはありません。相続の際にもめる原因になり得る事情がある場合,Aさんの遺言があれば,紛争に発展せずに相続ができることもあります。

A
B
C
D
死亡
妻:相続人
子:相続人
子:相続人


注意点は?
〇 遺留分
遺言に書きさえすれば,自由気ままな分け方ができる訳ではありません。
兄弟姉妹以外の相続人には,「遺留分」という権利が認められています。
遺留分を侵害した遺産の分け方をした遺言書は,それ自体が紛争の火種になりかねませんので,注意する必要があります。
※ 「遺留分」は,相続から1年以内に請求しなければ認められません。
〇 方式
遺言書は,いくつかの方式があります。
一般的によくあるのは,公正証書遺言と自筆証書遺言です。
公正証書遺言は,公証役場という所で作成してもらう遺言書で,費用は掛かる反面,偽造や改ざんのおそれが少なく,遺言書として有効になり易いと考えられます。
一方で自筆証書遺言は,自分でいつでも作成できる点と費用が掛からない点で作成が比較的し易いと考えられますが,自分ですべてを手書きしなければならない点や,必ず記載しなければならない事項がある点など,偽造や改ざん防止のために厳格な要件が定められている点で,法律上の注意が必要となります(要件を満たしていない遺言書は無効となる可能性があります)。
また,遺言者が亡くなった場合,保管者又はこれを発見した相続人は,遺言者の死亡を知った後,遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して,「検認」を申し立てなければなりません。封印のある遺言書であれば,家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。公正証書遺言と違って,自筆証書遺言では,この「検認」手続が法律上必須となりますので,注意が必要です。
事実上の注意点としては,遺言書が発見されなかった場合は,せっかくの遺言書が無駄になってしまうおそれもあります。
なお,自筆証書遺言については,活用し易い方向へと,改正がされて来ています。具体的に言いますと,財産目録はパソコンで作成していいことになりました。また,保管については,平成32年(令和2年)7月10日(金)から,法務局で保管する制度が施行されることが決まりました。
遺言で自由に決められる範囲
例
制限される範囲
1
ー
2
2
ー
1
相続人が直系尊属のみではない場合の遺留分

