契約書作成相談室
日常で意識することはあまりないかも知れませんが、皆さんは様々な場面で、種々の「契約」をしながら、生活しています。
スーパーやコンビニで買い物するのも「契約」ですし、何か習い事をする場合も、「契約」です。
しかし、「契約書」という書面を交わす契約は、あまりしていないと思います。
日常で契約書を交わす機会に遭遇するとすれば、
自動車や不動産などといった高額な物を購入する
場合や、住む場所を借りたり保険に加入するなど、
ある程度継続的な契約を交わす場合などですよね。
このような一定程度限られた場合のみならず、契約を書面化することで、トラブルを予防できることはたくさんあります。



Aさん
Bさん(お店)
そもそも、契約書とは、どのようなもので、なぜ必要なのでしょうか。
● 契約とは?
契約書の説明の前提として、「契約」とは、どのようなことを指すのか、考えてみましょう。
契約とは、自分がある効果を望む場合、効果を望む旨の意思表示を相手方に対してし、相手方がその意思表示に対して応じる意思表示をし、
お互いの意思表示が合致することで成立し、法律上の効果を生じるものを言います。
例を挙げて説明します。
AさんはBさんのお店で売ってある、価格△△円の「○○」という商品が欲しいと思っています。
AさんがBさんに対して、「○○を下さい。」と言いました。それに対してBさんがAさんに、「では△△円を頂戴いたします。」と言いました。
この場合、どのようなことが法律上は生じているのか、分析してみましょう。
上記AさんとBさんの意思表示は合致していますので、「○○」の売買契約が成立したことになります。
「○○」の売買契約が成立したため、法律上の効果として、AさんとBさんは互いに、権利が発生し、義務を負ったことになります。
具体的に言うと、AさんはBさんに対して「『○○』という商品を引き渡せ」と言う権利が生じますが、同時に△△円を支払う義務を負います。
BさんはAさんに対して、「△△円を支払え」と言う権利が生じますが、同時に「○○」の引渡し義務を負います。
ちなみに、民法上の大原則として「契約自由の原則」という原則があり、当事者間で原則的に契約内容は自由に定めていいことになっています。
(もちろん、殺人の契約や著しく一方当事者が不利になる契約など、社会的に妥当ではない内容は無効になりますが。)
したがって、何も法律家を介したり、六法を見ながら契約したりしなくても、みなさんが何気なくしている行為で、法律上の効果が発生していることを、まず知らなければなりません。
◆ 契約・契約書とは・・・


○○(商品名)くださ~い
では△△円頂戴いたします
Aさんの意思表示 : 価格△△円の「○○」を買いたいと言ったこと ← 効果を望む意思表示
Bさんの意思表示 : 「では△△円を頂戴いたします。」=△△円で○○を売ります と言ったこと ← 応じる意思表示
合致
● 契約書とは?
契約書とは、契約の中身を書面に表したもので、契約の当事者は誰か、契約日はいつか、対象となる物は何か・数量は何個か、値段はいくらか、
契約発動の時期はいつか、契約により生じる義務の履行を怠った場合はどうするか、裁判になった場合の裁判所の管轄をどこにするかなど、
個別具体的な契約の中身が詳細に書かれていることが通常です。
書面にする主たるメリットは、
① 言った言わないの問題になりづらい(紛争の予防的な側面)
② 当事者間で、契約の効果が生じるまでの過程を明確に確認できる(過程の確認的側面)
② 裁判になった場合、契約内容の証拠の一つとなる(証拠的な側面)
・・・と言えます。
したがって、日常でお菓子を購入するというような、1回で終わる比較的安価な取引の場合、
後でお金の支払いがあったり、後でお菓子の引渡しがある訳でもないため、書面にするメリットはありません。
しかし、お菓子の販売業者が製菓会社からお菓子を購入する場合ではどうでしょうか。
業者の場合、売上を見越してお菓子を事前にある程度大量に仕入れ、販売による利益を見込むのですから、
単価の金額、数量、仕入の時期、仕入ができなかった場合の損害やリスク負担、販売が旨く行かなかった場合など、
仕入から販売に至るまでのあらゆる過程を事前に予測し見通しを立て、発生する可能性があるリスクについてどのように対処するか、
きちんと決めておかなければなりません。
このように、契約を書面化する必要がない場合と、必要がある場面があるため、どのような場合に書面にしておくべきか、
きちんと考えることが必要です。
