ペット法務相談室
このページでは、自分に何かがあり、ペットの面倒を見ることができなくなった場合に備え、
飼い主さんが元気な内に、大切なペットを守るための法的な措置を一緒に考えます。
「ペット」という立場
基礎的な法律上のお話しとして、悲しいことに、ペットは法律上「物」として扱われます。
なぜなら、法律は、「人」(自然人・法人)を基準に「人」と「それ以外」を区別しているからです。
したがって飼い主が亡くなった場合は、「物」として扱われるペットには「人」に与えられる相続権などは
当然ながら認められず、むしろ今まで通りにお世話してもらえるという保障すらない、非常に不安定な
立場に置かれることになります。
そこで、飼い主として、元気な内にペットな幸せの一生のために十分な対策を取っておきましょう!
まずは以下のフローチャートの流れに沿って、自分の場合は何をすべきか、一緒に考えてみて下さい。

自分には同居の家族がいる
↓ は い
もしもの時は、家族が面倒を見てくれる
⇒
いいえ
自分にもしものことがあった時でも、
ペットの面倒を見てくれる人がいる
は い
唯一の家族であるあなたがいなくなった際の、
ペットの悲しみを真剣に考えてみましょう。
仮にあなたがいなくなれば、殺処分される
おそれがあります。
運よく、ペットの受け入れ先が見つかったと
しても、ペット側はいきなり違う人間を「家族」
として受け入れるでしょうか?
ペットにも個々の性格や好き嫌いがあります。
まずは、あなたに何かあった際、ペットの面倒
を見てくれる人を探し、普段からペットと仲良く
してもらいましょう。
そして面倒を見てくれる人に、ペットにとって、
『あなたの次に好きな人』に、なって
もらいましょう。
いいえ
↓ は い
または
⇒
いいえ

A.遺言について
「遺言」とは、ご存じの通り、自分の死後を考慮し、死後の財産の分け方などを予め書面に書いておくことです。
遺言があれば相続人は遺言に従って財産を分けなければならないのが原則ですので、
自分の死後、自分の思いを法的に実現する手段として、有効です。
但し、法的な効力を生むために、民法という法律で「遺言」と認められるための厳格な要件が定められています。当事務所では、『公正証書遺言』をお勧めしております。

A-1.同居の家族がいる場合の遺言
ペットのために遺言を書く場合、同居家族もペットのことは十分にわかっているのが通常と考えられますが、いくつか場面を想定して考える必要があります。
当事務所では、お客様のご家庭の様子をしっかり把握した上で、ベストな遺言を作成致します。
A-2.遺贈
お世話をしてくれる人にペットとその飼育費用を合わせた財産を贈与することを、「遺言」に残すのが「遺贈」です。
この場合、相続人の立場からすれば、相続人以外の第三者が相続に介入することになるため、
争いが生じる余地があります。
可能な限り、生前から相続人の理解を求めるなど、工夫が必要です。
B.負担付贈与契約について
「贈与」とはつまりタダで物をあげることです。ここで言う「物」はペットだけではありません。
ペットとペットの飼育にかかる『お金』をセットにしてあげるのです。
もっとも、普通の贈与だけをすると、お世話をしてくれると言っていた人が口先だけの人で、お金だけもらって、ペットは放置する・・・というリスクがあります。
そこで、「贈与」に条件(=「負担」)を付ける訳です。
ペットのお世話をすることを条件に、『ペット』と『飼育のためのお金』をあげます・・・という
条件です。
条件を守らなければ契約を解除できるので、ペットの世話がされていない場合には、
解除して、お金とペットとを取り戻すことができます。
この契約を締結する場合、解除権を行使できる人を誰にすべきか、きちんと考えておく必要があります。
つまり、第1順位でペットを譲り受けた人がペットのお世話をしない場合、第2順位の人が解除権を行使して第2順位の人にペットと残りの財産を贈与する・・・など、当事者を複数立てることが肝要です。




C.信託契約について
「信託」とは、簡単に言うと、「他人を信じて何かを託すこと」を言います。具体的には、
「信託をする人」(=委託者)が、契約・遺言・公正証書等による意思表示方法により、「信託を受ける人」(=受託者)に一定の目的に従って、財産の管理・処分・その他
目的達成に必要な行為をさせることを言います。
ペットのための信託契約をする場合、今の飼い主さん(委託者)がペットのお世話を
できなくなった場合に備え、新しい飼い主さん(受託者)と信託契約を結ぶことになります。
信託契約のメリットは、受託者に監督人が付けられるという点です。
上述した負担付贈与契約では、贈与を受けた人を監督する人はいませんが、信託に
すれば、「信託管理人」がペットが幸せに生活しているか、定期的にチェックし、監督する
ことになります。

